1日でも長生きしたい。1分でも長く生きてほしい。
しかし、いつかは必ず迎えなければならない死と別れ。
日本の場合、一般的に人が亡くなればお葬式をあげます。
お葬式には火葬はつきものですが、火葬はいったいどのように行われているのかご存知でしょうか?
いつかは誰しもお世話になる火葬場。今回はそんな火葬場、火葬炉の仕組みを紹介します。
近年建設された多くの火葬場はだいたい次のような構造になっています。
正面玄関から建物の中に入るとまず開放的な雰囲気のロビーがあります。
そのロビーを突き抜けて真っ直ぐ進むと火葬場のメイン設備である火葬炉があります。
炉の構造はまず手前に前室(一旦柩を収めるスペース)があり、その奥に炉(実際に柩を燃やすスペース)があるのが一般的です。
前室というのは昭和50年代半ば以降に設けられるようになった空間でそれ以前は扉を開けるとすぐに炉がありました。
扉を開けると焼け爛れた炉内がそのまま会葬者の目に飛び込んでくるため
と会葬者に抵抗感を感じさせてしまうことが少なくありませんでしたが、炉の手間に炉とは扉で区切られた前室を設ける事によって会葬者の視界を遮る事ができるようになりました。
また、前室は単に会葬者からの視界を遮るだけでなく火葬後の熱を冷ます冷却室としての機能も併せ持っています。
諸外国と異なり、日本では火葬の直後に収骨をするため焼きあがった骨はすぐに冷やす必要がありますが当然のことながら熱く燃え盛っていた炉に柩を入れたまま冷やすよりも前室に引き出して冷やした方が短時間で冷やされます。
ですから、火葬場に行った時、
と思っていた柩が収められたスペースは実はほとんどの場合、焼却炉ではなくその前室なのです。(ただし、旧式の火葬場では前室のない炉もあります。)
また、火葬炉の構造はかつては柩だけが炉の中に押し込まれるロストル式という構造でしたが最近ではロストル式に代わって台車式が主流になってきています。
ロストル式は格子状の支えの上に柩を載せる構造でその下の隙間によって炉内の空気や熱の対流がスムーズになって燃焼が効率的になるという優れた特徴を持つ反面、火葬後の骨は柩を支えていた格子を通して下に焼け落ちてしまうという欠点がありました。
もちろん、炉の下には受け皿があって火葬後の骨は全てそこで回収されますが骨はどうしてもバラバラにならざるを得ません。
しかし、炉の技術革新が進むにつれ柩に下の隙間はどうしても必要なものではなくなってきたため、台車に柩を乗せたまま炉内を往復させる台車式という構造の炉が登場しました。
台車式は耐熱性に優れた車輪、軸受、炉内へのレールがついているため柩の出し入れもスムーズに行えるようになり、さらに、骨が焼け落ちることもなくなり人体の形状を残して整然と並んだ骨を取り出す事が可能になりました。
台車式は火の回りが遅いため、燃焼時間はロストル式よりも長くなってしまうのですが、現在は多少時間はかかっても綺麗に焼ける方がいいという風潮から日本では台車式が主流になってきています。
ところで炉ではどのように火葬されるのかというと一般的にはだいたい次のような感じです。
告別室で最後のお別れの儀式が行われている時、排気装置のスイッチが入れられ、再燃炉が点火されます。(再燃炉は火葬中に発生した不完全燃焼物質、ガスなどを完全燃焼するための炉です。)
そして、炉内の温度が800℃程になったところで主燃炉(柩を入れるスペース)にも着火されます。
実はこの着火作業は結構危険を伴うもので
炉内の換気を十分に行わなった等のミスにより燃料ガスが先に炉内に充満したり未燃ガスが残留したままになるなどして炉が爆発するという事故も過去には何件も起きています。
現在は着火装置の自動化が進み炉の安全性はかなり改善されており、最近では着火のみならず「炉の運転状態を完璧にチェックする」という触れ込みの集中自動制御装置さえ出現しています。
しかし、実際には各遺体毎に燃焼条件が大きく異なるため、結局は火葬場の職員が火葬状況を確認しながら操作盤を使って一つ一つの炉を手動で運転している事がほとんどです。
火力を自動調整できるようコンピュータ制御システムが導入されている。
火葬場においても大抵職員たちは火葬されている様子を覗き見る事ができる炉の裏側にある小さな覗き窓から炉の中を自分の目で直接確認しながら炉の運転を行なっているのです。
脂肪やタンパク質の多さなどから一般に老人よりは若者、女性よりは男性そして、痩せている人よりは太っている人の方が火葬時間は長くかかり、また、体の部位には燃えやすい所と燃えづらい所があり、さらに、副葬品が燃焼を阻害する事例もかなりあります。
このため、炉は遺体をただ焼けばいいというような大雑把なものではなく、火葬中は熟練した技術者による様々な調整が必要になるのです。
燃焼状況に応じて酸素や燃料ガスを噴霧し続ける必要があり、バーナーから噴出する火炎の長さは限られているため、絶えずデレッキ(鉄棒)で焼却する部位を手元に引き寄せたりバーナーからの炎の噴出し、先を調整する必要もあります。
こういった事がある為、ある程度は炉の自動化が実現できているが炉の無人操作や完全自動化にまではまだ至っていません。
火葬炉の点火後、30秒後・1分後、棺の内部はそれぞれどんな状態になっているのでしょうか。
まず初回の火葬の場合は炉は冷えているので対流効果も兼ねて空焚きします。
それ以前に再燃焼炉はすでに着火済みです。2回目からは空焚きは不要です。
鏡板との棺の焼け落ちが始まると5〜10分くらいにて棺は全て焼け落ちます。
少し不謹慎ですが、まず頭部を先に挿入の場合は頭髪等は瞬間的に消失します。また、足部の場合は四肢が反り返っています。
原則的には1分では内視しませんが幼児等の場合は頻繁に内視するそうです。
そして、人体の難燃部位である腰部はどうしてもデレッキ操作が必要となります。
稀にペースメーカ着装の方がいますが、必ず斎場に事前申告します。
爆発確認してからの内視となりますが、斎場によってはデレッキで除去してしまう場合もあります。
一番難儀なのはご遺体が厚い布等で覆ってる場合です。この場合は常監視していないと黒煙等でのおよび水分飛散での長時間火葬となってしまいます。
お子様のぬいぐるみも同様です。
また、ご遺体の脂肪部位は着火せずとも自家燃焼にて燃焼可能ですが個人差もあります。
以前の重油時代の低熱火葬の場合は水分が棺材に飛散しての消し炭状態にての難儀な場面もありましたが・・・
また、無煙無臭が建前ですが、やはり着火当初の発煙はありますし、臭気も永年には染み付いてしまいます。
そのため、大体の斎場では消毒室、浴室は設定されています。
全体的なご遺体の燃焼過程ではまず反り返りそして、崩れるような感じで燃焼されて最後は難燃部位の人的燃焼が標準作業過程です。
火葬は職員さんたちの熟練した技術や文明の進化のおかげで綺麗に遺骨を収骨出来るようになりました。
大事なことは見送る側の気持ちです。心からご冥福をお祈りして故人を見送りたいですね。